【家賃保証】アパート乱立!相続税対策&銀行融資は本当に大丈夫?【メリット・デメリット】

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少し前に、銀行の不動産融資が拡大していることが話題になりました。

地銀・信金の不動産業向け融資の増加の背景には、今年から相続税が増税された影響もある。借入金で不動産を購入すれば資産家は相続税を抑えられるため、地方の県庁所在市を中心に「相続税対策で賃貸用のアパートやマンションを建設するニーズが増えている」(有力地銀)という。 

不動産向け融資、バブル期並み=金融庁、地銀の監視強化(時事通信) - Yahoo!ニュース

もうこれは本当にその通りです。企業の景気は円安の影響を受けやすい企業を除いてほぼ上向いています。一方で、そういった業績好調な企業は慎重なため設備投資には消極的で銀行の設備資金融資が伸びていません。

そのような中、都会のみならず地方の地主さんに対してもアパート業者は「相続税増税+家賃保証+長期融資獲得」という黄金コンボにより、売上を伸ばして銀行は融資残高を伸ばしています。今回はこの解説です。

 

相続税増税→銀行融資が伸びるカラクリ

相続税とは、ざっくり言えば死んだ人の持っている資産にかかる税金です。ここでいう資産は現金や有価証券、不動産などの有形固定資産をいいます。

資産が多いほど税率は高くなります。だからお金持ちは、様々な手段で資産を少なく見せようと(もちろん合法で)します。

ポイントは、借入金などの「負債」は資産の中から引くことが可能なことです。この原則を覚えておいてください。

 

具体的に説明します。分かりやすく説明するために各種控除は考慮していません。

土地持ちのAさんは1億円の土地と5000万円の現金を持っていました。総資産は1.5億円です。

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このままだとAさんが亡くなった場合に相続税率は40%かかってしまうため、総資産1.5億円×40%=8000万円が相続税としてかかってしまいます。

 

一方、その土地の上にアパートを建てたらどうでしょう。

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1億円借りて1億円の建物を建てたとします。すると、総資産は2.5億円となり、借入金は1億円となりますので、総資産は1.5億円になります。

 

これでは借入前と借入後で総資産に変動はないため相続税は同じになってしまいますね・・・。

ここからがポイントなんですが、現行の相続税法上、自分で使っている不動産と、人に貸している不動産では資産の評価方法が違うため、上の図のようにはならないのです。

土地の場合は人に貸すとざっくり2割の評価減、建物については固定資産税評価額が相続資産評価に使われますから、建築価格のざっくり4割の評価減となります。他人に貸しているから自由度の低い土地とみなされて、高い課税はされないんですね。

そうすると以下のようになります。

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5000万円の現金+8000万円の土地+6000万円の建物ー借入金1億円=総資産9000万円となって、アパート建築前に比べて税率は30%下がって、支払う税金は2700万円となり、めでたく節税できるわけです。

 

家賃保証+長期融資のコンボにより誰でも借りれる

「家賃保証」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

家賃保証とは、ざっくりいうと「将来30年間オーナーに家賃を支払い続けますよ」という保証です。具体的にはアパート業者が地主などに「うちが一括でアパートを借り上げて(サブリース契約)入居率が80%(業者によって違いますが大体こんなもんです)を切ってしまった場合でも入居率80%分の家賃は最低限うちで弁償して払います」というものです。

一方で、アパート業者は銀行に対しては「うちが入居率80%保証するから、家賃保証期間は安心ですよ!(返済が滞りませんよ!)だから融資期間も家賃保証期間にして!」と頼むのです。

融資期間が長ければ、毎月の返済額も少なくなりますから、家賃から返済額を引いた「あがり」も多くなります。あがりが多ければアパートオーナーも大喜び、管理会社は家賃保証の管理費を貰えるから大喜び、銀行は家賃保証があるから取りっぱぐれがないし、融資期間が長いから最終的な金利収入も増えるしと良いことづくしのように見えます。

本当に大丈夫??

家賃保証の問題点は、アパート業者により違いはありますが「入居率を保証するだけであり、家賃そのものの金額を保証するわけではない」ところにあります。家賃相場が将来下がってしまえば大幅に手取りの家賃が減少する可能性があるのです。

仮に一部屋6万円×10部屋の物件だとしたら、家賃保証されると聞けば満室時60万円×80%=48万円が保証されるように思いますが、周辺の家賃相場が4万円になれば家賃保証額32万円となります。このケースでは想定より約35%の減少です。このあたりの話は以前テレビでも採り上げられていますね。

www.nhk.or.jp


銀行も当然そのあたりのリスクシナリオは織り込みます。ですが、30年後の家賃相場なんて誰にも分かりません。学生街にアパートを建てたとしても、少子化などで大学が移転する、なんてことも考えられます。また、アパート業者すら倒産している可能性があります。

また、怖いのは税制改正です。過度に節税を目的とした財テクはどんどん規制されます。最近ではこんなのがありましたね。

www.nikkei.com

借入金の控除がなくなることはなさそうですが、貸家建付地の評価減とか見直されてしまうとこのスキームは崩壊してしまう可能性があります。

不動産融資は危険なのか?

散々ネガキャンしてしまいましたが、上記は最悪のケースを想定した場合です。仮に家賃が下がっても、別収入等で借金を返していえさえすれば何も問題ないはずであり、そこを銀行は目利きしなければなりません。

また、銀行から融資期間を長くする条件を引き出すことができれば、毎月返済額も少なくて済みますから、家賃がある程度下がっても返済継続は可能であると思います。

中古物件市場も盛況 

アパート業者による不動産融資も増加していますが、一方で中古不動産市場も盛況です。最近のマンション価格の上昇により、中古物件にも人気が集まっています。リノベーションにより、新築と変わらないくらいの価格の物件も見ます。最近では、空き家問題もあることから、借金して内装綺麗にして人に貸せば儲かりそうです。

ただし、賃貸物件(自分では使わないで人に貸して家賃を得る)として見た場合に現状では銀行融資は厳しいことが多いです。それは、銀行は耐用年数の範囲内でしか融資期間を設定できないからです。

木造であれば新築時からカウントして22年、RCマンションなら47年といった具合です。先述したとおり家賃の「あがり」を増やすには、融資期間を長くする必要があります。耐用年数のルールが適用されて、銀行に融資期間を10年程度の短期間に設定された場合は、家賃のあがりどころか返済額の方が多くなり赤字になってしまい、事業にならないことが多いのです。

不動産価格を正確に判断する人が必要

中古物件であっても、駅チカだったり、間取りの需要が多いなど「立地」や施設の実際の「具合」(ひび割れとか)を、「物件により個別に」価値が判断されるべきです。

しかし、銀行では先に挙げた耐用年数により物件価値を判断するほか、公示価格や固定資産税評価額、路線価等の「公的な」物差しにより物件価値を「一律に」判断します。元々不動産市場に詳しい人材が少ないことや、一つ一つの個別の物件を判断する時間もないためです。

もし、市場価格を踏まえた不動産価格を正確に、安く判断できる仕組みができれば、長期融資リスクの問題や、中古物件融資の問題が一気に解決できます。

価値が正確に判断できれば、いざという時に売却する判断がしやすくなるからです。融資を受ける側も、リスクを読みやすくなります。蓄積されているビックデータを利用すれば、将来の実現可能性は高いと思います。

まとめ

  • 長期融資はリスクがあるが、長期ならば返済額が減る分ある程度コントロールできそう
  • 中古物件市場にも融資を拡大すべきだが、現状銀行融資は中古物件案件には馴染みにくい
  • 市場価格を踏まえた正確でスピーディーな不動産評価が安価でできれば市場が広がりそう