3分でわかる商工中金の審査不正問題|東日本大震災関連も含め深刻化の可能性

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こんにちは、りゅうです。

先日、朝日新聞を中心に話題になったのが商工中金の審査不正問題です。

政府系金融機関の商工組合中央金庫(商工中金、社長=安達健祐元経済産業事務次官)は6日、景気悪化や災害時の国の制度融資の審査で不正があったと発表した。制度の適用を受けるため、職員が融資先の企業の資料を改ざんしていた。件数は判明した分だけで221件にのぼる。融資総額は公表していない。(朝日新聞デジタル)

商工中金 制度融資の審査不正 | 2017/1/7(土) 0:37 - Yahoo!ニュース

恐らく銀行関係者以外は、ちんぷんかんぷんな話題かと思いますので、どのような不正が行われた(と考えられる)か、何が問題なのか、そして今後問題となるであろうことをまとめてみました。

商工中金とは

商工中金(商工組合中央金庫)は、政府と民間団体が共同で出資する唯一の政府系金融機関。他の政府系機関に比して民間金融に近い性質を持つとされ、多くの政府系金融機関が融資のみに特化した機能を持つなか、預金の受け入れ、債券の発行、国際為替、手形を通じた短期金融など、「幅広い総合金融サービス」を行っている。

 (出典:Wikipedia)

いわゆる政府系金融機関の一つで、中小企業を中心としてほぼフルバンキング(民間普通銀行が行うことができる業務)の機能を持つ金融機関です。個人での取引は個人事業主等の一部を除いて行わないので、看板を見かけたことはあっても利用したことがある人はごく少数かと思います。

危機対応業務とは

危機対応業務とは、内外の金融秩序の混乱、大規模な災害等に対応するため、主務大臣(財務大臣・農林水産大臣・経済産業大臣)による危機認定がなされた場合に、「指定金融機関」が株式会社日本政策金融公庫からの信用供与を受け、事業者に対する必要な資金の貸付け等を行うものです。

(出典:危機対応業務とは : 財務省

国が、日本政策金融公庫を通じて、同金庫および政策投資銀行に対し、貸付元金の他に利子補給まで行う制度融資のことです。

災害関連の場合は被害の長期化が想定されるために、借り手に有利な「長期間借入」することができます。更には、利子補給により払った利息が返金され実質的に無利子になります。

このような制度のため、銀行からすると借りる側にそこまで負担を強いるものではないため、担当顧客に対し不正をしてまで貸付を行っていたものと考えられます。

日本政策金融公庫は国から出資を受けておりますので、ざっくりいうと利子補給金も税金です。商工中金の不正な審査により税金が不当に使われていたということです。

どのような不正が行われたのか

報道では「試算表等を一部の職員が自ら書き換える等して対応した」とあります。

通常、制度融資の場合は災害等の事象によって一定の損害があったことを残高試算表(決算始期から直近までの途中経過の決算書)などにより確認する必要があります。

この災害関連の危機対応業務ではどのような要件が必要だったのか、ネット上では探せなかったのですが、恐らく前年同期比で売上あるいは利益が減少していたことを証明する必要があったのだと思います。

金融機関では顧客より試算表を預かり内部審査を行いますが、預かる紙ベースの試算表のフォーマットが顧客によりバラバラのため、所定の形式にOCRや手打ちで入力します。恐らくこの段階で実際に記載されている数字よりも悪く見せかけることにより、制度融資の要件に不正に合致させて融資を実行したと思われます。

一方で、商工中金の担当者を擁護するわけではありませんが、この試算表というのは中小企業の場合かなりいい加減です。そもそも中小企業にとって決算書は税務申告と銀行借入のために使われるためだけに作っている会社も多いです。いい加減な部分は銀行の担当者が想像でフォローすることも、場合によってはありえます。

東日本大震災関連も含めるとヤバい状況

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(出典:商工中金ニュースリリースhttp://www.shokochukin.co.jp/newsrelease/pdf/nr_161110_01.pdfより引用)

商工中金のニュースリリースをみると、熊本地震に関する危機対応業務の融資実績は昨年2016年10月時点で628件305億円もの実績があります。

今回の不正融資の件数は2017年1月6日時点で185口座(鹿児島支店実績。名古屋等の他の地区は熊本地震以外の危機対応業務だと思われます)ですからざっくり3割くらいは不正融資だったことになります。

更に問題なのは、東日本大震災関連は2 兆 2,043 億円 (38,452 件)と熊本地震関連と比べると「約60倍超」と、はるかに上回る実績があり、仮に全国的に同様の不正審査が行われていた場合にとんでもないことになりうるということです。

商工中金は全国転勤が短期間に行われるため、特定の地域・人物だけがノルマのプレッシャーから逃れるために不正が行われたようにも思いません。東芝での「チャレンジ」同様に、明文化されていなくともノルマを必達するために、やむなく制度融資を不正に実行するような「空気」みたいものがあったのではないでしょうか。

まとめ

  • 商工中金の不正審査は過度なノルマにより発生したのかも?
  • 危機対応業務の資金は「税金」
  • 東日本大震災関連までさかのぼり調査が必要

銀行は貸出先に困窮しています。ただでさえ金余りの中、実質無利子でもないと中小企業は借りてくれない、そういった状況です。

全容解明し、再発防止に努めるのはもちろんですが、ノルマのためには何でもするといった社風がもしあるとすれば、反省をして改めていかなければならないと思います。

 

↓誰しも検察に狙われる恐怖。普通の銀行員が検察に狙われた記録です。