会社の「運転資金」正しく理解していますか?銀行の見方とは。元銀行員が詳しく解説します

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よく「会社の運転資金が足りなくなったので・・・」と経営者は銀行に相談しに行きます。しかし、「運転資金」って一言でいっても、銀行が考える運転資金と、社長が考えるそれとは、少し認識に違いがある気がします。

今回は、経営・財務関係の話でよく耳にする運転資金って何?ってことを解説します。

運転資金と設備資金

銀行が事業者向けにお金を貸す際に、大きく分けて運転資金と設備資金にわかれます。

・運転資金・・・売掛金や人件費など当面の支払に使う資金

・設備資金・・・会社の資産になる建物や機械、パソコンなどの購入資金

銀行は貸出したお金の色分けを厳密にします。例えば設備資金の場合は、融資を受けて機械を買ったら、すぐにその領収証を銀行に提出しなければなりません。他の使い道への流用は許されません。

一方、運転資金の場合は後述する運転資金の考え方により、ざっくり使い道を定めているため領収証の提出は求められないものです。

運転資金は、これから説明する「所要運転資金」や、季節ごとに一時的に必要となるため調達する「季節資金」(電器屋さんが冬にストーブを大量に仕入れる場合など)、法人税などの納税で一時的に多額のキャッシュが必要になるため調達する「決算資金」、同じように一時的な資金需要に対応する「ボーナス資金」などがあります。 

 

なぜ運転資金が必要なのか

領収書などの書類が必要なく、ある程度融通の利く運転資金ですが、そもそも運転資金とはなぜ必要なのでしょうか。

それは、実際の商売の現場では、掛売・掛買ということが行われていて(わかりやすくいえば「ツケ」ですね)、商品やサービスを売ったとしてもすぐに現金で入金されるわけではないからです。

毎月15日締め翌月末払いの支払条件であれば、例えば12月16日に商品を売り上げたとしたら、2月末までお金が入ってきません。会社は常にお金の出入りにタイムラグが発生するんです。その間、1月末に大きな支払があったら、そのお金を会社はどこかから調達する必要があるのです。たとえ損益計算書が黒字であっても、この資金繰りを乗り越えなければ、会社はあっけなく倒産してしまいます。

 

所要運転資金とは

売掛金や買掛金などは毎日変動します。そこで銀行では、ざっくりした必要な運転資金を算出する際に次のような計算を用います。

 

所要運転資金=(受取手形+売掛金+棚卸資産)(支払手形+買掛金)

 

これは以下より説明した「貸借対照表」の項目です。 

 

www.ryuno.net

 

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掛け売りした分や、これから短期で売れる在庫の合計から、掛け買いした分を引くと、カバーできない不足分の資金がわかるのです。

もちろん、売掛金や買掛金は常時変動しています。その時は所要運転資金計算の算出に依らず、突発的な支出が発生した場合はケースバイケースで対応するのですが、自身の会社で必要な運転資金の概念は、上記の式である程度把握できます。

 

所要運転資金は短期借入金での調達が望ましい

銀行融資は、借入期間が1年未満の「短期借入金」、1年超の「長期借入金」があります。

所要運転資金程度の融資を銀行から受ける場合は、短期運転資金で借りるのが本当は望ましいです。所要運転資金は常時変動しているからです。また、所要運転資金の限度内であれば、銀行は「当然に必要とする資金=安全な貸出ができる」と認識します。

しかし安全な貸出とはいえ、銀行は貸出した後に決算書などによって投資効果を検証します。自由度が高いとはいえ、やはり好き勝手に使って良いという資金ではありません。

 

ただし、短期借入は借りる方も貸す方もデメリットがある

先ほど説明したとおり、短期借入金にて所要運転資金をカバーするのが望ましいのですが、所要運転資金の金額が季節問わずに大体一定の場合は別の要素を考える必要があります。それは、短期借入金を3ヶ月程度にて都度更新すると、そのための事務負担が大きく、双方にデメリットになりうる、ということです。また銀行サイドでいえば、長期借入にしたほうが将来にわたって利息が多く取れるので、どちらかというと(担当者としては)長期融資にしてほしいのです。

先ほどから説明している所要運転資金の理屈は破綻してしまうのですが、優良先と認められる会社には、運転資金として長期借入を提案することもあります。長期借入の場合は、業種によって大きくされますが、ざっくり平均月商(年間売上高÷12)の1〜2ヶ月程度が運転資金として借りられる限度額だと思われます。

現金預金が貸借対照表上では最も大切です。所要運転資金という理屈もありますが、突発的な支払は実際にはあり得ます。運転資金の考え方の基本は抑えた上で、長期借入も検討してみる、というのが社長にとっても、銀行にとっても良い落としどころです。

まとめ

・「設備資金」と「運転資金の違い」

・ 「所要運転資金の概念」

・ほんとは運転資金は短期借入が望ましいが、長期で借入することもある