元銀行員が指摘する、粉飾決算の見抜き方

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銀行勤めだった頃、明らかに粉飾決算を行っている決算書を渡されたことがあります。大企業がたびたび粉飾決算を行って話題になりますが、中小企業の場合、ある程度は決算内容が粉飾されていると思って対応していました。厳密にどこからがセーフでどこからがアウトなのか判断できないんです。解釈も色々ありますし。

ただし、度を過ぎる粉飾はさすがに黙認できませんので経営者に指摘したこともあります。

 

粉飾したらどうなるのか

粉飾がばれて指摘されると、「じゃあ粉飾した科目を直したところで、税務署に修正申告するのか?」という話になります。対銀行だけで完結するのであれば会社も対応するのでしょうが、税務署を巻き込んで、更に他の金融機関に取引があれば、そちらにも謝罪と修正が必要になります。粉飾の起源が過去何年にも及べば、それはもう大変なことになることは目に見えています。

一金融機関の若造がそこまで強要することもできず、あしらわれて終わったこともしばしば。支店長判断により黙殺されたこともありました。

担当者としては、そういった政治的判断に苦しむので、経営者の方におかれましては粉飾決算は絶対に行わないでほしいと切に願います。

  

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年商3億円の住宅リフォーム会社がありました。従業員は10名程度の小さな会社です。社長は主人、経理は奥さんという典型的な同族会社でした。

 

決算書ができたというので、事務所を訪問して決算書を受け取りました。社長は営業に出ており、奥さんが応対しました。

 

内容は売上高は同程度、経常利益はギリギリ黒字。家族でやっている小規模な会社なので、大きく利益を出す必要もありません。よくある決算書の落としどころでした。

 

「会社は順調そうですね〜」「運転資金は足りていますか」などというトークをしている最中、私はあることに気づきました。

 

 

「現金預金が多すぎる」

 

 

その会社は当行メインでしたし、科目明細の預金欄を見ても、ほぼ当行に預金があるようでした。事前に当社期末の預金残高はチェックしてきていますが、その数字と10倍近く乖離があるのです。

 

私「奥様、期末に売掛金が一気に入ってきたんですかね、預金が高止まっているようですが・・・」

 

まずはどういった反応をするか確かめる必要があります。私の勝手な判断で経営者に濡れ衣を着せるわけにはいきません。

 

 

奥様「そうなの?税理士がやっているから、よくわからないわねえ」

 

 

出た!税理士に丸投げする経営者!

社長が「あとは税理士に聞いてくれ」「数字は妻がやっているから」と言ってくる会社は要注意です。

本当に財務のことはよく分からないケース、その場を逃れるために意図的にそういった発言をするケースがありますが、いずれもお金を貸したくない経営者のタイプです。経営サイドであれば決算内容については最も関心を持たなければならないことであるのは当然のことです。

 

私「それなら、もしかしたら税理士さんが科目を間違ったのかも知れませんね。うちの預金とちょっとあわないなあと

 

奥様「ああ!確か入金は現金だったはずだわ。そうかもしれないわね」

 

私「現金ですか。それなら期末には(応接室にあった金庫を指さして)金庫にしまわれているんですね〜

 

 

奥様「そうね、まずは税理士に聞いてみないとわからないけどね」

 

 

私「わかりました。決算書は持ち帰らせて頂きます。何かあれば、また連絡させてください」

 

これだけ言って、一旦その場を去りました。

 

次の日、奥様から連絡がありました。話したいことがあるとのこと。

再び事務所を訪れ、話を聞いてみると以下のようなことでした。

 

「金庫に現金はない。税理士と意見が合わず何回か税理士を変えている中で、不明金が発生した。(つまり、過大な預金は使途不明の仮払金)発生原因はよくわからないが、経営処理は税理士に任せた」

 

「社長である主人はこのことを知らない。内緒にしていてくれ」

 

「今後どうしていけばいいか教えてくれ」

 

 

私は

「社長も含めて話し合いをすべき。過年度の分も含めて修正申告できるならしてください。このままでは新規融資は相当厳しいですよ」

 

 

と話をしました。

 

恐らく何かしらの仮払金が発生したものの、使途不明だったため社長からの叱責を恐れて粉飾したのでしょう。せめて預金残高の粉飾するなら、他行口座の預金を変えれば良かったのに、、、なめられたもんです。

 

結局私が担当であった期間に修正申告することはありませんでした。恐らく社長にも話すこともなかったんでしょうが・・・。ずいぶん前の話なのでもうよくわかりません。 

職人肌の社長の場合は、このように奥さんに経理を丸投げして、自身は売上と利益程度しか見ていないことがあります。以前お知らせしたとおり、銀行員がよく見るのは「貸借対照表」です。損益計算書と比べれば多少理解しづらいのかもしれませんが、社長には当然関心を持ってもらいたいことです。

 

過去記事です。決算書の基礎の基礎の見方を解説しました。

 

www.ryuno.net

 

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